comicbook’s blog

日常を彩るエンターテイメントについてちょこちょこ書きます。

「母」の一画目は「一」ではないと初めて知った作品(『とめはねっ!鈴里高校書道部』)

みなさん、こんばんは。
気温が上がってくるとアイスが食べたくなります。
特にスカッとするガリガリ君は最高です。
ふと立ちかえると、冬はコタツ雪見だいふくを食べているので、年中アイス食べてる気がします。
 
さて、「とめはねっ!鈴里高校書道部」14巻購入しました。

とめはねっ!鈴里高校書道部 14 (ヤングサンデーコミックス)

作者は河合克敏先生です。
2007年から連載が開始し、この14巻にて完結となりました。
この作品とは、作者の前作である「モンキーターン」を読み、その他の作品に興味を持ったことで出会いました。
専門的な内容を取り上げている漫画は本当に勉強になります。
 
今回はそんな「とめはねっ!鈴里高校書道部」を書道についてを交えながら紹介します。
 

「母」の一画目は「一」ではない

この作品を読み始めた時に最も驚いたことです。
そんなの当たり前と思われる方はスルーしてください。
一人一文字ずつ書いて「母」という漢字を完成させるリレー書道を行うことになり、一画目を望月が書くことになります。
スッと「一」を書いたとき、うまい!と思ったら書き順が違うとツッコまれ、「えっ?」となったのが懐かしいです。

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(「とめはねっ!鈴里高校書道部」二巻より引用)
 
この中央に書かれた「一」から「母」という字を完成させるのですが、あまりにも素晴らしい出来に息をのみました。

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(「とめはねっ!鈴里高校書道部」二巻より引用)
 
ここからこの作品にのめり込んでいきました。
 

書体には様々な種類があります

まずは基本となる「楷書」と「行書」です。
この辺りはWordなどのFont設定で「楷書体」、「行書体」があるのでなじみ深いのではないでしょうか。
年賀状を作成するときにお世話になった覚えがあります。
 
ここからあまり聞いたことのない言葉が出て来始めました。
「祐筆」という立場があることも初めて知りました。
職場などで筆文字の書面を書くことを任される人のことを指すようです。
それでは書体を紹介していきます。
 
■「篆書」(てんしょ)
 秦の始皇帝が定めた「小篆」と呼ばれる漢字の始祖です。
 また、篆書には「甲骨文字」や「金文」も含まれます。
 落款(らっかん)と呼ばれる自分の名前を彫った印(スタンプのようなもの)にも使われます。
 印を彫ることを篆刻(てんこく)というそうです。 
 漢委奴國王(かんのわのなのこくおう)で有名な「金印」も当てはまります。
 
■「隷書」(れいしょ)
 「篆書」を書きやすい形にしたものです。
 もっとも手近なものでお札に書かれている「日本銀行券」などがそうです。 
 
これらの書体を使って書を書きます。
 

書き方はさらにたくさんあります

一巻で初めて出てきた作品は「青春アミーゴ」の歌詞を書いたものでした。
この時点でもびっくりです。
実際、書道は上記で紹介させていただいた「母」のように漢字一文字や四文字熟語のものが主だと認識していました。
 
■「臨書」(りんしょ)
 お手本通りに書くことを指すようです。
 作中では書の古典作品を模写することとなっています。
 書の古典作品はかなりの文字数があり、すべてを模写することを全臨と言います。
 自分の持っていた書道のイメージはこれです。
 
■「大字書」(だいじしょ)
 小字数書(しょうじすうしょ)とも呼ばれます。
 感じたことを表現するために文字数をしぼって、その字の構造や線のあり方を表現することです。
 個人的に最も好きなジャンルです。
 別作品ですが「ばらかもん」で登場した「星」もこれに当たると思います。

ばらかもん ブックカバー 星

■「漢字かな交じりの書」
 その名の通り、漢字とひらがなを使って書かれる書を指します。
 近代詩文書とも呼ばれます。
 身近なものだと「ひよ子」がこれにあたります。

ひよ子東京スカイツリー(7個入り)

■「かなの書」
 ひらがなのみで書かれる書のことを指します。
 間に漢字が含まれているのですが、これは「変体がな」と呼ばれる文字です。
 これについては、ひらがなの生い立ちにつながります。
 詳しくは「とめはねっ!鈴里高校書道部」七巻を読んでみてください。
 心の中のことを書きたくなったからできたという話は良かったです。

とめはねっ! 鈴里高校書道部 7 (ヤングサンデーコミックス)

 
■「前衛書」(ぜんえいしょ)
 さも絵画のような印象を受ける書のことです。
 登場時は「大字書」との違いがわかりませんでした。
 上田桑鳩氏の「愛」と呼ばれる作品をみて納得しました。
 上手い下手ではなく、面白いか面白くないかが大事という点も違いです。
 

書道を通して成長する

ここまでは書についての話になっていましたので、物語に触れます。
主人公は帰国子女の男子高校生。
とあるきっかけから書道部に入部し、書道を通じて成長していく物語です。
主人公は性格がかなりおとなしいので、周りが物語を進めていく印象ですが、決断力や行動力は高く、どんどんと成長していく姿は読んでいて気持ちいいです。
恋愛に奥手なため、積極的に動けない点は難点かもしれませんが(苦笑)
作中に様々な書道の作品が見られるのですが、それぞれが物語の場面場面で非常に重要な意味を持っていました。
14巻で主人公が書いた書の作品(実際は枡田真実氏作)はこの物語のたどり着いたゴールでした。
 

作者からの言葉

14巻の巻末に掲載されている作者の言葉は納得の内容でした。
ぜひ手にとって読んでいただきたいです。
 
この作品との出会いを提供していただいた河合克敏先生に御礼を述べたいです。
本当にありがとうございました。
次回作も楽しみにしております。
 
どちらかというと書道の紹介になってしまいましたね。
素晴らしい作品が完結となり名残惜しいとっしゃんでした。